【徹底解説】J-REIT完全ガイド:仕組み・メリット・最新動向がわかる!
J-REITとは?基本的な仕組みと他の投資商品との違い
J-REITの概要
J-REIT(ジェイ・リート)とは「Japan Real Estate Investment Trust」の略称で、日本版の不動産投資信託を指します。
多数の投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、住宅など複数の不動産を購入し、そこから得られる賃料収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。
アメリカ発祥のREIT(Real Estate Investment Trust)の仕組みに倣い、2001年9月に日本で初めて上場が実現しました。
J-REITは証券取引所に上場されており、株式のように売買できますが、法律上は「不動産投資法人」という会社形態を取っている点が特徴です。
仕組みと運営の流れ
J-REITは法律に基づく「投資法人」として設立され、自らは実務を行わず(※投資法人には社員がおらず、役員のみ)、資産の運用や管理は外部の専門会社に委託されています。
具体的には、資産の取得・運用戦略は「資産運用会社(運用会社)」が担い、物件や資産の保管は信託銀行などの「資産保管会社」が行い、会計や税務など事務手続きは「事務受託会社」に委ねられます。
投資家はJ-REITが発行する「投資口(投資証券)」を購入し、出資金を提供します。投資法人はその資金で不動産を取得し、賃料収入や物件売却益を原資に分配金を支払います。
また、投資法人は銀行からの借入や「投資法人債」(社債に相当)の発行によっても資金調達が可能で、不動産購入や運用資金に充当します。
なお、投資法人には株主総会にあたる「投資主総会」があり、役員の選任など重要事項について出資者である投資主(投資家)が議決権を行使できます。
他の投資商品との違い
J-REITは株式や通常の投資信託と異なる特徴を持ちます。
まず株式との違いでは、J-REITは賃貸不動産からの安定収益を主な原資とするため、東証株式平均の配当利回りと比べても高い分配金利回りを実現しやすい傾向があります。
例えば2020年1月時点でJ-REITの平均予想分配金利回りが約3.49%と、東証一部上場株の平均配当利回り2.3%を大きく上回っていました。
またJ-REITは法律上、利益の90%以上を投資家に分配すれば投資法人自身の法人税が実質的に免除されるため(後述)、利益が投資家に還元されやすい構造です。
一方、株式は企業の事業活動による利益配分であり、内部留保や役員判断で配当が左右されるため、一般に配当利回りはREITより低めです。
また値動きの面でも、株式は業績や景気で大きく上下し短期で数倍になる場合もありますが、J-REITは賃料収入をベースとするため急激な値上がりは少なく比較的安定しています。
投資信託(ファンド)との違いでは、一般的な公募投資信託は投資家からの解約に応じて資金を払い戻すことができますが、不動産を主な投資対象とするJ-REITでは物件をすぐ売却して解約金に充てることは困難です。
そのためJ-REITは解約を受け付けないクローズドエンド型の仕組みを採用し、代わりに証券取引所に上場して市場で売買できるようにしています。
これにより、投資家は途中解約はできないものの、株式と同様に市場価格で売却できる高い流動性が確保されています。
また、海外REITとの違いとして、J-REITは法律上安定した賃貸運用に特化するよう制限があり、自ら不動産開発事業を行うことはできません。
一方で米国など海外のREITは開発事業も手掛けられる場合が多く、リスクを取って開発利益を狙うものも見られます。
このように、J-REITは「不動産収益のパススルー(通過)」に特化した仕組みであり、事業会社株式や従来の投信とは異なるメリット・デメリットがあります。
投資対象となる不動産の種類
J-REITが投資対象とする不動産は、多様な用途にわたります。
上場当初はオフィスビルが中心でしたが、徐々に対象が広がり、オフィス, 住宅(レジデンス), 商業施設(商業ビル・ショッピングセンター), ホテル, 物流施設(倉庫), ヘルスケア施設(高齢者ホーム・病院等)といった様々なジャンルの不動産に特化したREITが登場しています。
実際、現在上場しているJ-REITのうち約半数は単一用途に特化した専門型であり、残りは複数用途を組み合わせた複合型です。
単一用途特化型の例として、オフィス特化型(例:日本ビルファンド投資法人)、住宅特化型(例:アドバンス・レジデンス投資法人)、商業施設特化型(例:イオンリート投資法人)、ホテル特化型(例:ジャパン・ホテル・リート投資法人)、物流施設特化型(例:日本ロジスティクスファンド投資法人)、ヘルスケア施設特化型(例:日本ヘルスケア投資法人)などが挙げられます。
それぞれのセクターで専門性を発揮し、投資家は関心のある不動産分野に絞って投資することも可能です。
J-REIT市場の歴史と成長
市場創設と初期の拡大
日本のJ-REIT市場は2001年9月10日に最初の2銘柄(日本ビルファンド投資法人とジャパンリアルエステイト投資法人)の上場から始まりました。
その後、制度整備の進展とともに上場数は急増し、2003年以降たくさんのREITが新規上場します。2007年10月には上場銘柄数が42に達し、市場規模は急成長を遂げました。
この間、J-REIT市場は投資対象が拡大し国内外の投資マネーを集め、当初わずか3,200億円程度だったJ-REIT全体の保有不動産額は、約3年で1992年当時の米国REIT市場規模に肩を並べたとも言われています。
2000年代半ばには日本の不動産価格上昇(ミニバブル)も相まって、J-REITは順調に資産を増やしていきました。
リーマンショックによる停滞
しかし、2008年の世界的な金融危機(リーマンショック)はJ-REIT市場にも大きな打撃を与えました。
投資マネーの急激な流出と不動産市況の悪化により、2008年10月にはニューシティ・レジデンス投資法人がJ-REIT初の破綻に追い込まれています。
この破綻事例では、清算時に残った資産が投資額を上回り投資家に一部返金されたものの、市場の動揺は大きく、他のREITも資金繰りに苦慮しました。
2008年末から2010年前半にかけて、スポンサー企業による支援やJ-REIT市場安定化ファンド(2009年9月組成)といった措置も講じられ、市場全体で合併・再編が相次ぎました。
例えば2010年2月には東京グロースリート投資法人がインヴィンシブル投資法人に吸収合併され、2010年3月にはアドバンス・レジデンス投資法人が日本レジデンシャル投資法人を吸収合併するなど、生き残りをかけた統合が進んだのです。
この結果、リーマンショック前42銘柄あったJ-REITは一時34銘柄まで減少(2011年11月時点)し、市場規模も大幅に縮小しました。
市場の回復と再成長
2012年頃から日本銀行の金融緩和政策や不動産市況の改善を背景に、J-REIT市場は再び活気を取り戻します。
2012年以降、新規上場が相次いで銘柄数は増加に転じ、2019年12月には64銘柄まで拡大しました。
同時期には東京オリンピック開催に向けた不動産投資ブームもあり、J-REITの保有資産総額も膨らみます。
2019年10月時点でJ-REIT全体の時価総額は約17兆円に達し、これは世界で米国に次ぐREIT市場規模となりました。
J-REITは20年足らずで、日本の東証一部不動産セクターに匹敵するマーケットへ成長したと言えます。
もっとも、その時点でも日本のGDP規模に比べると市場規模はまだ小さく、米国REIT市場の約10%程度の時価総額に留まっており、今後さらなる成長の余地があると指摘されています。
コロナショックの影響
ところが2020年初頭、新型コロナウイルス感染拡大による経済ショックが再びJ-REIT市場を襲いました。
株式市場と同様にREITも急落し、東証REIT指数は2020年2月に2200ポイント超だった水準から、3月19日には約1100ポイントと半値近くまで暴落しました。
ホテルや商業施設を中心に賃料収入の先行き不安が広がり、多くのJ-REITの分配金利回りは暴落によって一時5%超に跳ね上がりました。
例えばジャパン・ホテル・リート投資法人や日本リテールファンド投資法人(現:日本都市ファンド投資法人)はコロナ前の高値から半値以下にまで急落しています。
しかし、その後世界的な金融緩和策や経済対策の効果もあって株式市場が反発すると、J-REITも徐々に値を戻していきます。
特に物流施設特化型や住宅特化型のREITは業績への悪影響が比較的小さく、2020年5月時点でコロナ前の水準近くまで回復した例もありました。
全体としても2021年には東証REIT指数が2000ポイントを超える場面もあり、コロナショックで失われた価値の8割以上を取り戻したとされています(※東証REIT指数は2021年9月に一時2148ptを記録)。
しかしその後、2022年以降はインフレ懸念による金利上昇圧力から再び軟調となり、2023年には年間で指数が▲4.6%下落するなど調整局面が続きました。
こうした金利環境や景気動向に左右されながらも、J-REIT市場は長期的に見れば着実に規模を拡大してきています。
現在の市場規模: 2023年6月末時点で上場J-REITの数は60銘柄、時価総額合計は約16兆円に達しています。
保有不動産総額は約22兆円、物件数は4,600物件超にのぼり、市場創設当初から飛躍的な拡大を遂げました。
用途別の資産構成を見ると、オフィスビルが約40%と依然最大ですが、物流施設約18%,商業施設約17%,住宅約14%,ホテル約8%, ヘルスケア約1%と分散が進んでおり、J-REIT市場全体で見れば多様な不動産ポートフォリオを実現しています。
またJ-REIT市場は個人投資家だけでなく機関投資家や海外マネーも参入し、我が国の不動産金融市場で無視できない存在となりました。
投資家にとってのメリット(魅力)
J-REITには、不動産投資のハードルを下げ魅力を高める以下のようなメリットがあります。
- 少額から投資可能:
直接不動産を購入するには多額の資金が必要ですが、J-REITであれば数万円~数十万円程度から不動産投資を始めることができます。
実際、東証に上場している60以上のJ-REITの中には1口あたり5万円前後のものもあり(例:投資法人みらい等)、自己資金が限られる個人でも手軽に不動産オーナーのような投資が可能です。
複数のJ-REITに分散投資することで、少額でも様々なタイプの不動産から賃料収入を得ることもできます。 - 高い分配金利回り:
J-REITは賃料収入など安定したインカムゲインを原資としており、一般的に株式の配当よりも分配金利回り(配当利回り)が高めです。
先述の通り、株式の平均配当利回りが2%台なのに対し、J-REIT平均は3~5%程度で推移することが多く、投資家は比較的高水準の定期収入を得られます。
例えば2020年前後は平均3~4%台、直近では金利上昇に伴う価格調整で平均約5%前後まで上昇しています(2025年3月時点で平均5.09%)。
このように高い利回りは年金生活者やインカムゲイン重視の投資家にとって魅力であり、毎月あるいは年数回の分配金が安定収入源になり得ます。 - 高い流動性と手軽さ:
J-REITは証券取引所に上場しているため、株式と同じように市場価格でいつでも売買できます。
現物不動産のように買手を探して契約を交わす必要がなく、平日の取引時間中であればすぐ現金化できる流動性があります。
また、売買の手続きも株式取引と同様に証券会社の口座から行えるため手軽です。
不動産を直接保有すると管理・運営の手間やコスト(固定資産税、修繕等)がかかりますが、J-REITならそうした煩雑さもなく、運用はすべてプロに任せられます。 - 税制上の優遇:
J-REIT最大の特徴の一つが税制面のメリットです。
J-REIT(投資法人)は、その期の税引前利益の90%以上を投資主に分配することで、法人税が実質的に課税されない仕組みになっています。
これは「投資信託及び投資法人に関する法律」による導管性(パススルー課税)で、利益が投資家へ直接渡されるイメージです。
一方、通常の株式会社は利益に法人税がかかった後で配当が支払われますから、J-REITの方が二重課税を回避でき、投資家は利益の大部分を受け取れる利点があります。
なお、個人が受け取る分配金には通常20.315%の源泉徴収課税がありますが、NISA口座を利用すれば非課税で受け取ることも可能です(J-REITは少額投資非課税制度NISAの対象商品です)。
これらのメリットにより、J-REITは「手軽な不動産投資」として個人投資家にも人気が高まっています。
実際、低金利が続いた2010年代には預金や債券に代わる収益商品として注目を集め、多くの資金がJ-REIT市場に流入しました。
小口で始められて高い利回りを得られる点は、他の金融商品にはないJ-REITならではの魅力と言えるでしょう。
リスク要因と注意点
魅力の多いJ-REITですが、投資である以上リスクも存在します。
主なリスク要因は以下の通りです。
- 不動産市況の変動リスク:
J-REITの収益源は不動産の賃料収入や売却益です。
そのため景気後退や不動産マーケットの悪化により賃料水準が下がったり空室率が上昇したりすると、分配金が減少し価格も下落する可能性があります。
テナントの撤退や賃料交渉力低下、競合物件の増加などで保有物件から得られるキャッシュフローが減れば、分配金利回りの低下や業績悪化懸念から投資口価格が影響を受けます。
特にオフィスビルなど景気に敏感なセクターでは景気循環による賃料変動リスクに注意が必要です。
また物件の老朽化によりテナント付けが難航したり大規模修繕費がかかる場合も、収益圧迫要因となります。
J-REIT各社は資産の入替え(古い物件を売却し新しい物件を取得)やリノベーション投資などで物件価値維持に努めていますが、将来的な資本的支出リスクも念頭に置くべきです。 - 金利上昇リスク:
J-REITは多くの場合、物件取得のために銀行借入や社債発行でレバレッジ(負債)を利用しています。
そのため市場金利が上昇すると、借入金利負担が増加して利益を圧迫するリスクがあります。
特に日本銀行の金融政策変更や長期金利の上昇局面では、J-REITの利払いコストが徐々に増える可能性があります。
また、金利上昇局面では債券など他の利回り商品が相対的に魅力を増すため、投資資金がJ-REIT市場から流出して価格が下落しやすい点にも注意が必要です。
実際、日本のJ-REIT市場は取引額の50%以上を外国人投資家が占めるとされ、米国長期金利の動向に大きく影響される局面があります。
金利が急上昇すれば海外投資家の売り越しが発生し、市場全体が下振れするリスクがあることを念頭に置きましょう。 - 空室率・テナントリスク:
保有不動産のテナントが退去したり、契約更新時に賃料減額を求められたりすると、収入が減少します。
特にホテルや商業施設型のREITでは景気や消費動向により稼働率が変動しやすく、住宅REITでも競合物件や人口動態によっては空室リスクがあります。
不動産の種類によってリスク分散されるとはいえ、特定物件で大口テナントに依存しているケースなどでは、そのテナントの経営破綻リスクも考慮する必要があります。
また、リートが物件を取得する際に想定していた稼働率や賃料が達成できない場合、予想より分配金が低下する可能性もあります。
J-REITは複数物件に分散投資していますが、セクターごとの構造的リスク(例えばオフィス需要の長期的な減退や商業施設のネット通販代替など)にも留意すべきでしょう。 - 天災・災害リスク:
日本は地震や台風など自然災害が多い国であり、大規模災害が発生すると保有不動産が被害を受けるリスクがあります。
地震で建物が損壊したり、火災・洪水で施設が機能不全に陥れば、その間の賃料収入は途絶え、修復費用も発生します。
J-REIT各社は火災保険や地震保険に加入して一定の補償を確保していますが、カバーしきれない損害や復旧までの機会損失は分配金に影響を及ぼす可能性があります。
また震災後には不動産需要全体が冷え込むこともあり、東日本大震災(2011年)直後にはホテルREITなどで一時的に分配金を減らす動きも見られました。
天災リスクは頻度は低いものの潜在的なインパクトが大きいため、物件の地域分散や耐震性能などにも注意を払う必要があります。 - その他リスク:
上記の他にも、上場廃止や倒産のリスクもゼロではありません。
実際に破綻したニューシティ・レジデンス投資法人のケースでは投資家に元本以上の返金がなされたものの、一般の企業同様に倒産すれば投資額が大きく毀損する可能性があります。
また、新規物件取得が思うようにできず成長力が低下したり、運用会社のガバナンス不全で不正が起きるリスクも考えられます。
為替リスクに関しては、基本的にJ-REITは国内不動産が中心のため直接的な為替変動リスクは限定的ですが、近年一部のREITが資産の一部を海外不動産に投資する動きもあり(例:産業ファンド投資法人が方針変更し米国不動産への投資枠を設定)、そうした場合には為替・海外不動産市場のリスクも加わります。
以上のように、J-REIT投資では不動産投資特有のリスクと金融商品としての市場リスクの両方を理解することが重要です。
ただし各J-REITとも投資家への情報開示を行っており、物件明細や財務状況、リスク要因は目論見書や決算資料で確認できます。
適切に分散投資し、リスクを把握しておくことで、J-REITのメリットを活かしつつ安定した運用を目指すことができるでしょう。
最新のJ-REIT市場動向(2025年版)
市場規模と平均利回り
足元のJ-REIT市場は、近年の価格調整により利回り水準が上昇傾向にあります。
2025年3月中旬現在で上場J-REIT全体の平均分配金利回りは約5.1%と、数年前より高い水準となっています。
これは2020年頃に平均3~4%台だった利回りが、2022年以降の金利上昇局面で価格が下落した結果、平均利回りが上昇したものです。
市場全体の時価総額は約14.45兆円(2025年3月時点)で、コロナ前のピーク時(17兆円)に比べると減少していますが、これは一部銘柄の統合や価格下落の影響によるものです。
上場銘柄数は60前後で推移しており、直近では新規上場と合併・上場廃止がそれぞれ散発的に起こりつつほぼ横ばいです。
2023年には地域特化型の「東海道リート投資法人(コード:2989)」が新規上場し、不動産私募ファンドからJ-REITへの転身事例も見られました。
一方、運用効率向上のためスポンサー同士でREITを合併させる動きも続いています。
総じて、J-REIT市場は時価総額15兆円前後・利回り5%前後の水準で推移しており、過去と比べ投資家にとって割安感が増しているとの声もあります。
高利回りの注目銘柄
現在の市場では、一部のJ-REITが分配金利回り6%超という高い利回り水準になっています。
例えばオフィスビル中心のグローバル・ワン不動産投資法人(8958)は分配金利回り約6.9%と上場REIT中トップクラスの利回りです。
また、中規模オフィスや住宅を組み合わせたOneリート投資法人(3290)も利回り6.6%前後、地方物件に強みを持つマリモ地方創生リート(3470)やタカラレーベン不動産投資法人(3492)、東海道リート投資法人(2989)なども6%台前半~半ばの高利回りとなっています。
これら高利回り銘柄は、オフィス市況の先行き不透明感や地方物件特有のリスクから価格が低迷し利回りが上がっている面もありますが、その分分配金収入の厚みは魅力的です。
一方、物流施設特化型の日本プロロジスリート投資法人(3283)やGLP投資法人(3281)、住宅特化型の日本アコモデーションファンド(3226)などは利回り4~5%前後で推移し、市場平均より低めです。
これらは安定性や成長性が評価され相対的に価格が高く維持されている銘柄と言えます。
例えば産業ファンド投資法人(3249)は物流施設を中心に多様な産業不動産へ投資するREITですが、2024年夏時点で利回り5.4%程度と高配当であることから専門誌で「注目のJリート」として取り上げられました。
また森トラスト・ホテルリート投資法人(3478)などホテル系REITはコロナ後の需要回復期待で一時利回りが低下しましたが、その後の金利動向で再び5~6%台に上昇しています。このように、セクターごとに利回り水準が異なるのもJ-REIT市場の特徴で、高利回り銘柄は往々にして相応のリスクを内包しています。
投資家は利回りだけでなく物件ポートフォリオやスポンサー企業の支援体制なども勘案し、魅力的かつ堅実な銘柄を選定することが重要です。
投資家動向と需給
現在のJ-REIT市場は、国内外の様々な投資家によって支えられています。
特に海外投資家の存在感が大きく、日銀の低金利政策もあって日本のJ-REITは海外マネーにとって魅力的な投資先となっています。
実際、取引ベースでは外国人投資家が売買シェアの半分以上を占めると言われ、米国の金利低下局面では海外勢の買い越しが顕著になる傾向があります。
直近でも2024年8月に米国長期金利が低下すると外国人が大幅買い越しに転じ、東証REIT指数が反発した場面がありました。
一方で国内機関投資家(生保や年金基金など)は様子見姿勢も見られ、海外勢の動向が需給を左右している面があります。
また、近年はJ-REIT市場にアクティビスト(物言う株主)的な資金が入るケースも出てきました。
2020年にはスターアジア不動産投資法人がさくら総合リートを敵対的買収する出来事があり、さらに2025年1月には海外ファンドが割安なJ-REITにTOB(株式公開買付)を仕掛ける動きも報じられました。
これはJ-REIT市場全体が割安水準にあるとの見方からで、実際その買収提案をきっかけに他の投資家も追随買いし市場全体の価格が上昇するという現象も起きています。
こうした動きは従来あまり見られなかったもので、J-REIT市場が成熟し投資家層が広がったことを示唆しています。
これからのJ-REIT市場の展望
さらなる成長余地
J-REIT市場はこの20年で大きく成長しましたが、依然として米国REIT市場の1割程度の規模であり、日本の経済規模から見ても発展の余地があります。
今後、国内の年金基金や金融機関が資産運用多様化の中でREITへの投資を拡大すれば、需給面で追い風となるでしょう。
また、日本の家計金融資産には依然預貯金が多く占めますが、低金利環境や資産所得倍増プランの流れで個人マネーが投資信託やETF経由でJ-REIT市場に流入する可能性も高まっています。
市場規模拡大に伴い流動性がさらに向上すれば、より大型のREIT上場や海外投資家の参入も促され、好循環が生まれると期待されます。
もっとも今後の課題としては、日本銀行の金融政策転換による金利上昇リスクがあります。
仮に国内金利が急上昇すれば短期的には価格下落圧力が避けられず、市場の成長軌道にもブレーキがかかる可能性があります。
そのため安定成長にはマクロ経済の安定が重要であり、政府・市場関係者も動向を注視しています。
ESG投資の浸透
近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する投資姿勢が世界的に広がっており、J-REIT市場にもその波が押し寄せています。
多くのJ-REIT運用会社がESG方針や委員会を設置し、ポートフォリオ物件で環境認証(グリーンビル認証やCASBEE等)を取得したり、CO₂排出量削減の取り組みを強化しています。
例えば物流系大手のGLP投資法人はESG融資やグリーンボンド発行など資金調達面でもESG要素を取り入れ、長期投資家にアピールしています。
J-REIT各社は毎年のようにGRESB(不動産セクターのESG評価)に参加し、高評価を得たREITはプレスリリースで公表するなど、投資家への情報提供も進んでいます。
今後はESGに配慮した資産入替(例:環境性能の低いビルを売却し、グリーンビルディングを取得)やテナント企業と協力した社会貢献策など、ESGを意識した運用が一層求められるでしょう。
ESG投資マネーを呼び込むことは長期安定資金の確保につながり、結果としてJ-REITの持続的成長に寄与します。
ガバナンス面でも透明性の向上や利益相反防止策の強化が進めば、投資主の信頼感が増し市場全体の評価が高まると期待されます。
新たな不動産ジャンルの登場
J-REITが扱う不動産の範囲は、今後さらに広がる可能性があります。
その一例がデータセンターです。デジタル社会のインフラとなるデータセンターは需要が急増していますが、これまで日本にはデータセンター特化型のREITは存在しませんでした。
しかしNTTデータが2026年3月を目標に、日本初のデータセンターREITを創設する計画を発表しています。
当初資産規模1,000億円、将来的には5,000億円規模のデータセンターをREITに組み入れる野心的なプランで、順調なら数年以内に新ジャンルのJ-REITが誕生する見通しです。
データセンターは設備産業で減価償却が重いなど課題も指摘されていますが、実現すれば投資対象の幅が大きく広がります。
同様に、物流施設に隣接した工場用地やインフラ施設など、これまで私募ファンド中心だったアセットが公募REITに取り込まれる動きもありえます。
また、2015年には証券取引所にインフラファンド市場が開設され、太陽光発電施設など再生可能エネルギー資産に投資する上場ファンドも登場しました。
今後は従来型不動産にとどまらず、デジタルインフラやエネルギー関連など次世代型の不動産投資信託が姿を現す可能性が高まっています。
以上のように、J-REIT市場は節目となる20年を経て新たなステージに向かいつつあります。
国内外の投資マネーの動向、金利環境、制度整備など外部要因によって短期的な変動はあるものの、長期的にはより多様で規模の大きな市場へ成長することが期待されています。
投資家にとっては、引き続き高い利回りと安定収益を享受できる魅力的な投資対象であり続けるでしょう。
その一方で、市場拡大に伴って銘柄間の格差も広がる可能性があります。優れた物件と運用力を持つREITと、そうでないREITでパフォーマンスが分かれる場面も増えるでしょう。
したがって、これからJ-REITに投資する際は市場全体の動向を把握しつつ、各銘柄の戦略や財務、資産内容をしっかり見極めることが大切です。
本ガイドを参考に、ぜひJ-REIT投資への理解を深めていただければ幸いです。
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