ディスコ(6146)の決算情報と業績予想・株価分析

株式会社ディスコ(6146)の業績・株価分析

1. サマリー

株式会社ディスコ(証券コード:6146)は、半導体産業向け精密加工装置およびツールの世界的なリーディングカンパニーです。「切る(Kiru)」「削る(Kezuru)」「磨く(Migaku)」という独自のコア技術を駆使し、特にダイシングソーやグラインダといった分野で圧倒的な市場シェアを誇ります。同社の主な収益源は、精密加工装置の販売と、装置に使用される精密ダイヤモンド砥石などの消耗ツールの販売です。技術力の高さと市場における支配的な地位が同社の強みである一方、半導体産業の景気変動に左右されやすい点や地政学的なリスクなどが潜在的な弱点として挙げられます。近年、ディスコはAI関連やメモリ半導体向けの需要増加を背景に、堅調な財務実績を上げており、今後も成長が期待されています。

2. 会社概要:設立とコアテクノロジー

ディスコは1937年、広島県呉市にて第一製砥所として創業し、研削砥石の製造・販売から事業を開始しました 1。その後、1977年に株式会社ディスコへと商号を変更し 1、1999年には東京証券取引所第一部に上場を果たしました 1。1970年には精密加工装置の自社開発を開始し 1、2002年にはレーザ加工装置の開発にも成功するなど 1、半導体製造装置メーカーとしての地位を確立してきました。同社は、「高度な“Kiru”“ Kezuru”“. Migaku”」技術を事業領域の中核に据え 1、日々技術力の向上に努めています。この「切る」「削る」「磨く」という3つの技術は、半導体ウェーハをはじめとする様々な電子部品材料の精密加工に不可欠であり 3、ディスコはこの分野で世界をリードしています。具体的には、シリコン、サファイア、ガリウム砒素といった材料が、同社の装置によって極めて高い精度で加工され 3、スマートフォンやPC、自動車など、現代社会のあらゆる電子機器に搭載される半導体や電子部品の製造に貢献しています 3。ディスコのミッションは、「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術によって、遠い科学を身近な快適に繋げます」とされており 5、その技術を通じて、人々の生活をより便利で快適なものにすることを目指しています。また、同社は独自の管理会計システムである「Will会計」を導入しており、社内通貨「Will」を用いた個人ごとの収支管理を通じて、従業員のコスト意識や効率性を高める取り組みを行っています 1

3. 収益源の分析:装置、ツール、サービス

ディスコの主な収益源は、精密加工装置の販売と、それに使用される精密加工ツールの販売です 1。精密加工装置には、半導体ウェーハをチップに分割するダイシングソー、ウェーハの厚さを薄くするグラインダ、表面を平滑にするポリッシャなどがあります 3。一方、精密加工ツールは、主にダイヤモンド砥石であり 2、装置に取り付けて高速回転させることで、シリコンなどの素材を切断・研削する際に使用される消耗品です。装置の販売に加えて、この消耗ツールの継続的な販売が、ディスコの安定した収益基盤を支えています 6。実際、売上高の約2割はツール関連が占めており 6、これは一度導入されたディスコの装置が稼働し続ける限り、ツールの需要が継続的に発生するため、安定的な収入源となります。さらに、ディスコは製品納入後のアフターサービス、装置の定期点検や修理などのメンテナンスサービス、オペレーションやメンテナンスに関する研修サービスなども提供しており 2、これらも重要な収益源となっています。加えて、顧客の要求する加工品質や生産性に適した装置やツール、加工条件の組み合わせを導き出すアプリケーション事業も展開しており 2、顧客への付加価値提供を通じて収益に貢献しています。その他、精密加工装置のリースや中古品売買も行っており 2、多様な顧客ニーズに対応しています。

4. 市場における地位とシェア:ニッチ分野でのグローバルリーダー

ディスコは、半導体精密加工装置の中でも特にダイシングソーとグラインダの分野で圧倒的なグローバル市場シェアを誇っています 3。ダイシングソーにおいては70〜80% 7、グラインダ・ポリッシャにおいては60〜70% 8 のシェアを保持しており、これは競合他社を大きく引き離す水準です。例えば、ダイシングソーの分野では、2位の東京精密のシェアが19%であるのに対し 7、ディスコはその約4倍のシェアを占めています。また、CMP(化学的機械研磨)やレーザーダイシングといった他の精密加工分野においても、高い注目ランキングを得ています 11。一方で、半導体製造装置市場全体で見ると、2023年の売上高ランキングではディスコは世界13位に位置しており 6、国内では東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREEN、日立ハイテクに次ぐ5位となっています 6。これは、半導体製造装置市場には、露光装置や成膜装置など、より大規模な市場を持つ分野が存在するためです。しかしながら、ディスコは、ダイシングや研磨といった、高い技術力が求められる後工程分野において、確固たる地位を築いています 7

5. 強みと競争優位性:技術力と市場支配力

ディスコの最大の強みは、創業以来培ってきた高度な「切る」「削る」「磨く」というコア技術にあります 1。これらの技術は、半導体ウェーハを微細かつ正確に加工するために不可欠であり、長年の研究開発とノウハウの蓄積によって、競合他社には容易に真似できないレベルに達しています 12。特に、AI半導体のような最先端製品に使用されるダイサやグラインダにおいては、競合である東京精密が手掛けていないため、ディスコがほぼ100%のシェアを誇ると見られています 12。また、最適な加工結果を得るための応用技術であるアプリケーション技術も、顧客のニーズに応える上で重要な差別化要因となっています 10。圧倒的なグローバル市場シェアも、ディスコの大きな強みです 1。高いシェアは、生産におけるスケールメリットや、顧客との強固な関係構築につながっています。さらに、装置だけでなく、それに使用する消耗ツールも自社で供給できる体制は、安定的な収益源となるだけでなく、顧客にとっての利便性も高めています 6。精密加工装置の製造には高度な技術と長年の経験が必要とされるため、新規参入の障壁が高いこともディスコの競争優位性を支えています 13。加えて、ITやロボットなどの技術を内製化することで、装置の性能向上やサービスの進化を図っている点も強みと言えるでしょう 2。近年では、好調な業績と高い収益性も示しており 8、企業文化である「DISCO VALUES」や独自の「Will会計」システムも、従業員のモチベーション向上や効率的な経営に貢献していると考えられます 1。60年以上にわたるテストカットの実施を通じて得られた膨大な検証データとノウハウは、他社にはない大きな参入障壁となっています 13

6. 弱点と潜在的リスク:業界の景気変動と外部要因

ディスコの事業は、半導体産業の景気変動に大きく左右されるという弱点があります 12。半導体需要の増減は、半導体メーカーの設備投資意欲に直接影響を与え、ディスコの装置販売にも波及します。近年では、GAFAMなどのデータセンター投資の動向がAI半導体やGPUの需要に影響を与え、それがディスコの業績にも影響する可能性があります 12。地政学的なリスクも無視できません。特に、中国が半導体のサプライチェーンを国内で完結させる動きを強めると、ディスコの中国市場における売上が減少する可能性があります 12。ただし、中国での売上には中国の半導体メーカー向けだけでなく、外資系メーカーの中国工場向けも含まれるため、影響の度合いは不透明です 12。また、海外売上高比率が非常に高い(FY22年度で86.7% 3)ため、為替レートの変動も業績に大きな影響を与えます 3。円高に振れると、外貨建ての売上を円換算した際の価値が減少し、利益を圧迫する可能性があります。さらに、精密ダイヤモンド砥石に替わる新たな加工技術が登場した場合、ディスコの業績に影響を受ける可能性も否定できません 20。原材料や部材の調達においても、需給の逼迫や災害による調達難が生産に影響を与えるリスクも存在します 20。本社や主要工場が東京都大田区、広島県、長野県に集中しているため、大規模な自然災害や感染症の流行が発生した場合、事業継続に支障が生じる可能性も考慮しておく必要があります 20

7. 財務実績のレビュー:成長と収益性

ディスコは近年、堅調な財務実績を示しています。2024年3月期には、売上高3,075億54百万円(前年比8.2%増)、営業利益1,214億90百万円(同10.0%増)と過去最高を更新しました 14。これは、生成AI向け(主にHBM向け)、メモリ向け、パワー半導体向けのダイサ、グラインダの販売が好調であったことや、円安の影響も寄与しました 14。海外売上高比率は80%を超えており 8、グローバルに事業を展開しています。2025年3月期第3四半期累計期間においても、売上高は2,725億9,600万円(前年同期比34.1%増)、営業利益は1,150億9,800万円(同52.7%増)と大幅な増収増益を達成しており 17、これは主に生成AI関連の需要拡大によるものです。また、年間配当金も増額傾向にあり、2025年3月期の年間配当金予想は369円と、前期実績の307円から増加する見込みです 17

表1:株式会社ディスコ – 主要財務実績(過去5会計年度)

会計年度売上高(億円)営業利益(億円)当期純利益(億円)1株当たり当期純利益(円)
2020.031,410.8364.5276.5256.52
2021.031,828.6531.1390.9361.82
2022.032,537.8915.1662.1611.67
2023.032,841.41,104.1828.9765.47
2024.033,075.51,214.9842.1777.29

8. 株式評価指標:PER、PBR、配当利回り

2025年3月19日時点のディスコの株価は33,750円です 22。PER(株価収益率)は会社予想ベースで約32.39倍 22、実績ベースのPBR(株価純資産倍率)は約8.08倍 22、配当利回りは約1.09% 22 となっています。2025年3月14日時点では、PERは約45.92倍、PBRは約9.54倍、配当利回りは約0.85%でした 23。競合他社と比較すると、東京エレクトロンのPERは約19.4倍〜27.41倍 24、PBRは約5.65倍〜5.75倍 25 であり、Applied MaterialsのPERは約20.07倍〜23.58倍 27、SCREEN HoldingsのPERは約11.61倍〜12.60倍 28、PBRは約2.65倍〜2.85倍 28 です。ディスコのPERやPBRは競合他社と比較して高い水準にありますが 30、これは市場が同社の高い成長性を期待していることの表れと考えられます 12。過去のPERと比較しても、以前の過熱ぶりからすると割安感があるという見方もあります 12

9. 今後の成長ドライバーと見通し:AIと技術革新

ディスコの今後の成長を牽引する主な要因として、AI、5G、IoT、自動運転といった分野における半導体需要の増加が挙げられます 3。特に、AIデータセンターで使用されるHBM(高帯域メモリ)関連の装置に対する需要が非常に強く 9、ディスコはこの分野で高い競争力を持っています。同社は、次世代半導体向けの先進的な加工技術の開発にも積極的に取り組んでおり 2、研究開発への投資も積極的に行っています 31。アナリストレポートにおいても、ディスコの将来性については概ねポジティブな見方が多く 35、収益と利益の成長が期待されています。同社は中期経営計画「DISCO VISION 2030」において、2030年までに多様性を相互に認め合い、活かす企業文化を持つことを目標の一つとして掲げており 13、持続的な成長を目指しています。

10. 結論と提言

株式会社ディスコは、半導体精密加工装置およびツールの分野において、独自の技術力と圧倒的な市場シェアを誇るグローバルリーダーです。特にAI関連やメモリ半導体向けの需要増加を背景に、近年は堅調な財務実績を上げており、今後も成長が期待されます。同社の強みは、高度なコア技術、高い市場支配力、安定した収益源、そして継続的な技術革新への取り組みです。一方で、半導体産業の景気変動や地政学的なリスク、為替レートの変動といった外部要因には注意が必要です。

投資家やステークホルダーにとって、ディスコは、半導体市場の成長、特にAIや次世代メモリといった高成長分野の恩恵を享受できる魅力的な企業と言えるでしょう。ただし、マクロ経済の動向や地政学的なリスク、為替変動の影響も考慮に入れる必要があります。ディスコは、その強固な市場基盤と技術力を活かし、今後も半導体産業の発展に貢献していくことが期待されます。

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